オープンマインドな国「ノルウェー」の魅力~西野麻衣子の談話をもとに~

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ノルウェー国立バレエ団で二十余年にわたって活躍し、プリンシパル(最高位ダンサー)として『白鳥の湖』をはじめ数多の作品で主演を勤めたバレエダンサー・西野麻衣子。「ノルウェーで最も有名な日本人」といわれながら、しかしノーベル平和賞授与式でバレエ団を代表して踊りを披露するなど、その活躍は「ノルウェーに来れば誰でもノルウェー人になれる」という西野の言葉を体現するもの。ノルウェーが男女平等の福祉国家であることはよく知られるが、さらに自然を愛でながらその息吹を感じ生活に取り入れる「いのち」に対し等しく目を注ぐライフスタイルは、今の時代にマッチしているのだろう。「住みたい国ランキング」「住みたい都市ランキング」では、常に上位に登場するのも頷ける。
今回は西野の談話をもとに、さらに「ノルウェー」の魅力を、写真で紹介する。

 

■独立は20世紀。今では世界有数の裕福な国に

まずはかなり大雑把にノルウェーの歴史を紹介しよう。
ノルウェーは国土の半分が北極圏下の国だが、実はメキシコ暖流の影響で北の町トロムソでも1月の最低気温はマイナス5度前後と、札幌とあまり変わらない。この暖流が豊かな漁場を生んだことから、人類の歴史は先史時代にさかのぼることができる。夏の沈まない太陽と冬の暗い世界、凍土の冬と夏の日差しを浴びて一斉に芽吹く大地のなどの自然に、この地に住む人々は北欧神話の神々を見た。

紀元前4世紀頃にはノルマン人が定着し、彼らは8世紀頃からヴァイキングとしてアイスランドやグリーンランド、英国やフランスを経て地中海のシチリア、さらに大西洋を渡り北米へと乗り出していく。このノルウェー人、もといノルマン人たちはフランスやイギリスの王朝の歴史にも大きな影響を及ぼす(語り始めると話がそれるので、興味のある方はぜひ調べていただきたい)。

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ノルウェー本土では9世紀末、ハーラル一世のもと北欧最初の王朝が成立する。以後、ノルウェーはデンマークやスウェーデン、キリスト教の教会勢力などをかわしながら独自国家維持に努め、13世紀半ばのホーコン四世時代にアイスランドやグリーンランド、スコットランドを有する大国となる。しかし以後、次第に隣国の介入が強まり、16世紀頃にはほぼ完全にデンマークの統治下に組み込まれてしまった。

ノルウェーがデンマーク王子を国王ホーコン七世として戴き、正式に独立したのは1905年のこと。以後、「開かれた王室」のもと、男女平等、福祉政策を進める。転機が訪れたのは1969年、北海油田の発見だ。これにより、ノルウェーは一躍世界有数の裕福な国家へと躍進。福祉国家に富が加わり、現在は国民1人当たりの名目GDP世界第2位(2022年)1、民主主義指数:世界1位(2022年)2、ジェンダーギャップ指数世界2位(2023年)3、報道の自由度ランキング:世界1位(2023年)4という、「住みたい国ランキング」では常に上位にランクする国となっている。

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出典:1 Global Finance、2  Economist Intelligence Unit、3  Global Gender Gap Report 2023世界経済フォーラム、4 国境なき記者団(RSF)

■オスロではカフェを片手に街を巡る

首都オスロは人口約70万人。オスロフィヨルドの最奥に位置し、南に開けた港を山が三方から取り囲む街だ。17世紀の大火を機に「クリスチャニア」とも呼ばれたが、1905年の独立を機に、現在のオスロに戻っている。

街の港にひときわ映えるのがノルウェー国立オペラ・バレエ団の本拠地であるオペラハウスだ。完成は2008年で、外壁はイタリア産の大理石、内部はオーク材で、船会社がデザインしたというあたりはヴァイキングの伝統を持つノルウェーらしい。屋上はオープンスペースとして開放され、誰もがいつでもそこに登り、海を眺めながらのんびり過ごすことができる。

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オペラハウスの対岸には2021年10月に開館した新ムンク美術館が立つ。この国を代表する画家エドヴァルド・ムンク(1863 -1944)をはじめ国内外の芸術作品を展示する。

『ペール・ギュント』の作者、劇作家ヘンリック・イプセン(1828-1906)の博物館と劇場も2023年7月にリニューアルオープンしている。

ノルウェー人は自然を愛し、「家から300メートル以内に必ず自然がある」といわれるグリーンシティ。王宮公園やヴィーゲラン彫刻公園をはじめ、一息つける公園は豊富。また、オスロはカフェの街でもある。

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「カフェを片手に街巡り」がオスロを肌で感じるおすすめの方法。オスロは国民1人当たりの年間コーヒー消費量は8.3キロで世界第4位と、日本3.4キロの倍以上*5。一説によると1900年代に禁酒法が施行されたことにより、嗜好品としてのコーヒーが人気となったのだとか。

市庁舎ホールはノーベル平和賞授与式が行われる会場として知られている。こちらも見学は可能だ。

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出典:*5 全日本コーヒー協会「世界の一人当たりコーヒー消費量」2022年

■フィヨルドやオーロラ。ノルウェーならではの自然の魅力

ノルウェーを語るうえで欠かせないのが、数千万年という地球の営みが作り出したフィヨルドの絶景だ。フィヨルドとは、非常に簡単に言うと、厚さ数キロに及ぶ氷が自らの重みでズブズブと沈み、周辺の大地を削りながら海に向かって滑り落ちていくことでできた地形。それゆえU字やV字型の切り立った形になり、四季折々の自然とともにこの国独特の風土や景観を生み出した。

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世界自然遺産に登録されているガイランゲルフィヨルドとネーロイフィヨルドはノルウェー屈指の観光名所だ。また、ソグネフィヨルドはかわいらしい田園風の景観が特徴で、拠点の町ベルゲンは13世紀にハンザ同盟の経済基地として栄えた。ベルゲン生まれのノルウェーの国民的音楽家エドヴァルド・グリーグ(1843-1907)は、ソグネの自然から大いにインスピレーションを得たという。

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北極圏下のロフォーテン諸島も昨今人気の観光地。とくに漁村レイネは「絵はがきのような街」と、また「アナと雪の女王」の舞台のモデルとして人気だ。

多彩な魅力を持つノルウェー。夏ばかりでなく冬に訪れてもダイナミックな景観が楽しめる。もちろん冬はバレエや美術館でじっくり時間を過ごすのもおすすめ。ぜひ足を運んでみては。

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《参考文献》
ノルウェーを知るための60章(明石書店/2014年)、一冊でわかる北欧史(河出書房新社/2022年)、ヴァイキングの歴史(熊野聰・著/創元社/2017年)、3日でまわる北欧inオスロ(森百合子・著/SPACE SHOWER BOOks/2016年)、地球の歩き方 北欧2021~22(ダイヤモンド社、ダイヤモンド・ビッグ社)

 

 

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